■2007年7月17日
◆ 日本を取り巻くパラダイム転換 ◆
日本では、現在さまざまなパラダイム転換が起きています。パラダイムとは、その時代特有の基本的なものの見方や考え方、あるいは思考の枠組みです。ではここで、金融のパラダイムに関する3つの事柄を取り上げてみたいと思います。
①企業は、内部留保が多く資産をたくさんもっているほうがよい。
②資金は、銀行に預けておけば安心。
③投資は、リスクが大きいから手を出さないほうがよい。
それでは、順番に考えてみましょう。
まず、①について。
確かに内部留保や資産などの蓄えが多い企業は、一見、経営の安定度が高いように見えます。しかし、内部留保が多く、資産はたくさん持っていても、株価が割安であれば、その分、敵対的買収をしかけられる確立が高くなります。
その理由は、キャッシュリッチ、すなわち現金ないし現金化しやすい資産が溢れているからです。
通常、企業の経営権を取得するにはその企業が発行している株式の過半数を取得すればよいことになっています。
ですから現金等が潤沢にありながら、その企業の株式が割安であれば、わずか過半数の株の取得で、その潤沢な現金等を自由にできるのですから、買収の標的として狙われる確立はグンとアップするのです。
そのため、特に上場企業は、IR(投資家向け広報活動)に力を入れたり、配当を上げたりして、あの手この手で自社の株価を上げようと必死になってるのです。
次に、②について。
日本が超低金利国であることは、すでに述べた通りです。
「ゼロ金利」が続く限り、銀行にお金を預けても増える可能性はごくわずかです。
それにペイオフの解禁により、銀行にお金を預けていても、1千万円とその利息しか保証してもらえなくなりました。
「なんだ、それならタンス預金のほうがマシ」なんて声も聞こえてきそうです。
もっとも、現実的には有り金全部をタンス預金にすると、空き巣が入ったりすることを考える怖いですから、安心という点では銀行に預けておく方がいいのではと思います。
今、日本は政府の舵取りで「預金から投資へ」の流れを作ろうとしています。
金融ビッグバンによって、銀行、証券、保険の相互参入が促進され、消費者ニーズにあった様々な商品の提供が可能になりました。
その一方で悪質業者がはびこり、消費者センターに多くの被害が寄せられるという事態も起きているのも事実です。
そこでその状況を一刻も早く打破すべく、急ピッチで法改正が進んでいます。
そのため外為取引(FX)は、リスクコントロールさえきちんとしていれば、投資によって効率よく資金を増やせる手段として、最近注目を浴びるようになったのです。
CHECK POINT
敵対的買収買収企業が被買収企業の許可を得ずに買収を進めること。
IR(Investor Relations)
投資家向け広報活動。
企業の情報を投資家に伝える活動や、ディスクロージャー(情報開示)を中心とした投資家向けのマーケティング活動である。
金融ビッグバン
金融システム等の抜本的改革。
英国のビッグバンをモデルとして、1996年に日本で行われた金融制度改革を「日本版ビッグバン」という。