FX取引の人気のひとつにスワップポイントによる投資手法が挙げられます。
外貨預金やMMFより低コストで、レバレッジがかけられることからよりリターンが狙え、高金利のマイナー通貨も取引できるところに人気があるようです。
スワップのみ毎月受取とか、為替差損が発生してもスワップと時間が解決などと、ローリスクミドルリターンの手法として紹介されていますが、本当にローリスクでスワップの恩恵にあずかれる手法なのでしょうか?
ポイント1 思いもよらぬ為替変動の発生
近いところでは、07年8月のサブプライムショックが記憶に新しいところです。USD/JPYは、6/22の高値124.13円から除々に値を下げ、8/17には一時、111.57円まで2ヶ月弱の間に12円以上下げました。
特に、8/14~8/17までの4日間で、7円近くも下げたのです。
スワップに換算すれば2年分以上の損失になります。
GBP/JPYは、ほぼ同時期に31円以上、同4日間で19円近く下げました。
これは、なにも特別なケースではありません。為替相場ではよくあることです。
要因は、戦争でもテロでもオイルショックでも何でもかまいません。
特に昨今の相場環境は、実需よりもヘッジファンドなどの投機的資金が主となっているので、材料さえあれば相場は大きく動きます。
直近のレート判断でここまでは上がらないだろうとか下がらないだろうという安易な判断は禁物です。
ポイント2 金利差の縮小、逆転
ほとんどのスワップトレーダーは、いわゆる円キャリー取引になると思います。低金利の円を売って、高金利の外貨を買い、その金利差をスワップとして受け取ります。
では、その前提はいつまで続くのでしょうか?
日本の低金利がいつまで続くかという見通し次第ですが、金利差縮小どころか金利逆転も考えられないわけでもなく、そうなれば逆にスワップ金利を払い続けることになります。
数年前によく言われた国家破綻などのトンデモ話にはならないにしても、日本の借金総額や今後の人口動態を冷静に考えるとき、いつかはインフレにならざるを得ないと思います。
ポイント3 マイナー通貨の流動性、カントリーリスク
高金利通貨はエマージング通貨に多い。人気のNZYにしても、人口わずか400万人程度の経常赤字国で、流通量もわずかです。
ましてや、南アランド、アイスランドクローナ、トルコリラにいたっては・・・。
例えば、年利17.5%に魅力を感じトルコリラを取引しようと思ったあなた、トルコという国の何を知っていますか?
90年代には100%を超えるインフレだったことを知っていますか?
対ドルで50%以上の暴落があったことを知っていますか?
現在は落ち着いているようですが、今後起こらないと言い切れますか?
暴落が起これば、金利収入など微々たるものになります。
単純に考えれば、金利が高い=インフレリスクが高いともいえるのです。
よくある長期スワップ狙い戦略の例
USD/JPN $=120円、$100,000、レバレッジ10倍、スワップ140円の場合年利約42% 為替損益は考慮しない
◎単利の場合
経過年数 | 元本 | スワップ | 合計 | % |
1 | 1,200,000 | 511,000 | 1,711,000 | 142.6 |
2 | 1,711,000 | 511,000 | 2,222,000 | 185.2 |
3 | 2,222,000 | 511,000 | 2,733,000 | 227.8 |
4 | 2,733,000 | 511,000 | 3,244,000 | 270.3 |
5 | 3,244,000 | 511,000 | 3,755,000 | 312.9 |
経過年数 | 元本 | スワップ | 合計 | % |
1 | 1,200,000 | 511,000 | 1,711,000 | 142.6 |
2 | 1,711,000 | 728,000 | 2,439,000 | 203.3 |
3 | 2,439,000 | 1,038,000 | 3,477,000 | 289.8 |
4 | 3,477,000 | 1,480,000 | 4,957,000 | 413.1 |
5 | 4,957,000 | 2,111,000 | 7,068,000 | 589.0 |
計算上は、単利でも5年で3倍、複利なら6倍近くになりますが…。
上記のポイントに当てはめると、
ポイント1では、ロスカット率50%と仮定すると、6円程度の円安でロスカットになり元金は半分になります。レバレッジ5倍にしても12円程度の円安でロスカット。
1年目はうまくいったとしても、2年目ならやはり12円程度の円安でロスカットの憂き目にあいます。サブプライムショックを乗り切れません。
ポイント2では、スワップポイント140円で固定して試算しています。
金利差が同じでも、円高になればその分スワップは減少しますし、金利差が縮小すれば当然減少します。日本の低金利を考えると、減ることはあっても増えることはないような気がします。
ポイント3では、$ではちょっと考えにくいですがマイナー通貨が1/3に暴落したとしたら5年間うまく運用できていたとしもほぼ元本しか残りません。
それ以上の暴落でも現実にはロスカットが働くので、元本の半分は確保できる可能性はあります。